愛知ウェディング協議会AICHI WEDDING COUNCIL
WEDDING CULTURE

結納は、するのか —— 数字と、三河に伝わる「徳利転がし」

2026年9月12日 公開 ・ 一般社団法人 愛知ウェディング協議会(監修:理事 中村幸伸)

結納をするかどうか。結婚が決まって、最初に迷うことのひとつです。

「東海の結納は豪華だ」と言われます。嫁入り道具、派手な結納品。そう聞いて身構える方もいるでしょう。私たちもこの地域の事業者の団体として、一度きちんと数字を見てみました。

2024年の調査では、東海地方で結納を行った人は5.7%。全国平均の7.0%を下回ります。いま主流なのは両家の顔合わせで、90.0%がこれを行っています。
出典:ゼクシィ結婚トレンド調査2024 東海(リクルート、2024年10月)/東海 n=300

「東海の結納は豪華」は、いまの話ではありません

全国と比べると、東海はむしろ結納をしない地域です。東北や九州では15%前後の人が行っています。東海の5.7%は、首都圏の4.8%に近い水準です。

地域結納を行った人顔合わせのみ
東海5.7%90.0%
全国7.0%85.6%
青森・秋田・岩手16.5%
福島15.7%
九州15.2%
首都圏4.8%

出典:ゼクシィ結婚トレンド調査2024 東海。2023年4月〜2024年3月に挙式または披露宴を実施した人/東海 n=300。「結納を行った人」は「結納と顔合わせの両方」と「結納のみ」の合計

推移を見ても、増える気配はありません。2018年の調査では6.7%、2020年5.3%、2022年5.1%、そして2024年が5.7%。6年間、ほぼ横ばいの低い水準です。

費用も抑えられています。結納式にかかった費用は、東海が平均10.3万円。全国平均の43.9万円を大きく下回り、全国で最も低い水準です(首都圏84.8万円、四国114.3万円)。ただしこれは結納を行った人だけの平均で、東海の回答は10人分です。数字としては参考程度に見てください。

「かつては豪華だった」ことを、この数字は否定しません。昭和の記録を見ると、尾張地方の婚礼は「派手なことで有名」と書かれています。名古屋市域には、嫁入り道具を近所に披露する「エリカザリ」という習慣もありました。ただ、それは「かつて」の話です。いま結納をする人は、20人に1人です。

三河に伝わる「徳利転がし」

結納の形も、地域によって違いました。愛知県図書館が県史をたどって調べた記録に、この地方に伝わる婚約の儀礼が残っています。

トックリコロガシ(徳利転がし)——婿方が持参した酒を両家の関係者で飲み干し、その徳利を転がして結婚を約束する儀礼です。西三河の平野部を中心に、東尾張から知多半島にかけての地域に分布していました。
出典:レファレンス協同データベース(国立国会図書館)/回答館 愛知県図書館。典拠は『愛知県史 別編民俗3(三河)』ほか

結納品を交わすのではなく、酒を飲み干し、その器を転がす。それで約束が成ったことにする。ずいぶん潔い形です。

名古屋の菓子まきが「近所へのお披露目」だったように、この地方の婚礼の儀礼には、二人だけで完結させない仕掛けが多くあります。誰かに見てもらう、誰かと分け合う。徳利転がしも、両家が同じ場で飲み干すという形をとっています。

では、いま何をするのか

東海の90.0%が行っているのが、両家の顔合わせです。結納のような決まった型はありません。だからこそ、何をする場なのかが分かりにくいという声も聞きます。

私たちの会員からよく聞くのは、「決める場ではなく、知る場にするとうまくいく」ということです。日取りや費用の分担をその場で詰めようとすると、空気が固くなります。まずは両家が顔を合わせ、どんな家族なのかを知る。決めごとは、それぞれが持ち帰ってからでも遅くありません。

手土産、席次、当日の進め方。迷うところはありますが、どれも「こうでなければならない」というものではありません。結納が20人に1人になった時代です。形式より、集まった意味のほうが残ります。

おわりに

結納をしない人が95%だからといって、この地域に婚礼の文化が無いわけではありません。形が変わっただけです。

徳利を転がして約束した時代も、結納品を並べた時代も、いま料亭で顔を合わせる時代も、やっていることは同じです。両家が一度、同じ場に集まる。それを大事にしてきたことが、記録から読み取れます。

一般社団法人 愛知ウェディング協議会は、この地域で結婚式に携わる事業者が業種を越えて集まる団体です。地域の婚礼文化を記録し、次の世代へ引き継ぐことを目的のひとつに掲げています。

出典

  1. リクルート『ゼクシィ結婚トレンド調査2024 東海』2024年10月
    郵送調査/2024年4月2日〜5月27日/2023年4月〜2024年3月に挙式または披露宴を実施した人/東海 n=300(愛知227・岐阜41・三重32)。同調査は2024年版で終了し、後継の調査に東海の地域別集計はありません
  2. レファレンス協同データベース(国立国会図書館)「徳利転がし」回答館:愛知県図書館
    典拠は『愛知県史 別編民俗3(三河)』『愛知県史民俗調査報告書2』『日本民俗地図6(婚姻)』ほか。分布は西三河の平野部を中心に東尾張・知多半島まで
  3. レファレンス協同データベース(国立国会図書館)「昭和の嫁入り仕度」回答館:名古屋市鶴舞中央図書館
    典拠は『昭和の結婚』『愛知県史 別編[5]民俗』『新修名古屋市史 第9巻 民俗編』『名古屋地方の婚礼と習慣』。尾張の婚礼が「派手なことで有名」との記述、名古屋市域の「エリカザリ」もここから

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